入居面接 縦横切替
 アパートらしいアパートに住んでいる。
 木造二階建て、風呂トイレ共同。内廊下になっていて、廊下の奥には何故か日本人形が飾ってある。幽霊つきのありきたりなアパートだ。
「なんでやねん」
 四畳半の真ん中でタカシが言った。テレビの芸人を真似た言い方としぐさはひどくぎこちない。
「今どきこんなアパート、レアすぎるだろ……」
「そうかなあ」
「洗濯機まで共有とか、俺、耐えられない」
「あ、それ、友だちも言ってた」
 カラカラと笑うと、タカシは頭を抱えた。
 布団とタンスが押し込まれている押し入れと、デスクトップパソコンに占領されている文机、折り畳み式の机くらいしかない部屋は、私とタカシでいっぱいいっぱいだ。申し訳程度に置かれているくつ箱と、押し入れの扉を半分近く隠している冷蔵庫がなければ、もう少しすっきりして見えるかもしれない。
「ま、なんか飲んで落ち着いてよ」
 と、冷蔵庫とその上に置かれているグラスを指さす。
「入れてくれないわけですか」
「当たり前でしょ」
 しぶしぶ立ち上がり、グラスにペットボトルの烏龍茶を注ぐ。タカシは一気に飲み干すと、二杯目を注いで戻ってきた。ちなみに移動距離は合計一メートル未満。
「まあ、このアパートはそういうアパートなわけ。他の住人さんも納得して住んでるよ」
「よくもまあ、平気だよな……」
「安いしね。別に事故物件でもないし」
「幽霊がいたら充分事故物件だろ!」
「あら、偏見」
 わざとらしく頬に手を当ててため息をついてみせる。
「幽霊がみんな、自殺とか、他殺とか、そういう原因で死んだ人とは限らないでしょ」
「現世に思いを残してる時点で、充分事故だよ」
 タカシは肺の中の空気を全て吐き出すかのようにため息をついた。
「うーん、タカシには合ってると思うけどなあ、このアパート」
「地味で暗いから、とか言うんじゃないだろうな」
 そうじゃないよ、と黙って首を横に振る。
「幽霊の私と普通に会話するなんて、素質あるよ、タカシ!」
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