入口は出口 縦横切替
 行こうと思ったのに、理由はなかった。
 路線情報を頭にたたきこみ、すぐに駅へ向かった。
 荷物は鞄にタオルと水筒、文庫本。駅で弁当を買おうと思ったあとに、慌てて財布を入れたか確認する有様だった。
 ICカードで降車できるか自信がなかった。切符を買おうと思ったが、駅の路線図に目的の駅がなかった。少し考えたあと、ICカードを使って駅に入った。
 二つのターミナル駅で乗り換える。ここでやっと片道千円以上の場所に行くことに気づき、帰りの電車が心配になった。一時間に一本。とんでもない場所に行こうとしている。
 とはいえ、ここまできて引き返すこともできず、到着までの九駅を待った。
 単線の電車が朽ちかけたコンクリートの駅に着く。駅を遮るものは何もなく、風が吹きつけ、ひどい砂ぼこりだった。
 幼稚園までこの村にいた。駅は楽しい場所へ向かう入口だった。誰もいないこの駅は、本当に同じ駅なのだろうか。
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