Diary

pot-pourri cafeの日記的メモ

 mysterious door 8、お疲れさまでした。弊スペースまでおこしいただき、本当にありがとうございました。
 イベント前に再度ブログ記事を、なんて言ってたんですが、結局ドタバタしてしまい、事後のブログ記事となります。

 今回米澤穂信作品の二次創作で参加しているのが私一人(!)ということ、同じイベントに参加している友人もいないことから、お立ち寄りいただけないのではないかと思っていたのですが、お買い求めいただき本当にありがとうございます。
 正直、会場に着いたとき、周りがファフナーと銀河英雄伝説ばかりだったので「全然違うジャンルのど真ん中にいる!」となりました……(笑)。ご近所にメルカトル鮎や高槻彰良などのスペースが配置されていたので正直心強かったです。mysterious doorなのでそういう配置と言われればそうなんですが……(笑)。

 エアブーのほうは2/18まで続きますので、引き続きよろしくお願いいたします。ご注文いただいた通販分はなるべく早くお届けしますね。


 ここからは今回の新刊について。twitterが軽い感じの紹介ならば、こちらは少し長めに。自作の話なので記事を折っておきますね。


1.『光差す放課後』(古典部)
 アンソロジーからの再録です。

 『いまさら翼といわれても』出版前に書いた「千反田さんってどんな人かな」というお話。web再録は気の引ける作品なので紙だけでの再録です。一応言っておくと、作者死後七十年経過しているので大丈夫なはずです……多分……管理財団とかがなければ……。
 十年も前に書いたものですから粗が気になって……いくつか穴を埋めたり描写を足したりはしましたが、基本的には当時のままになっています。
 それにしても、この後の話で「百聞は一見に如かず」と言ってますが、特に関係性はないです。手癖ですね。(おい
 

2.『runaway girl』(古典部)
 同タイトル同人誌からの再録。十年後のホータローと千反田さんが久々に歩恋兎でお茶を飲む話。タイトルはコトリンゴさんの『runaway girl』という曲から。意味としては「家出少女」ですが、「かつていた少女はもういない」というニュアンスでつけたタイトルです。
 イベントに先行してpixvにweb再録しました。https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19243150

 これが一番初めに作った<古典部>シリーズ二次創作……のはずです。『光差す放課後』とどっちが先に書き始めたんでしたかね……まあ、発表したイベントは同日なので、この並びに。
 割とすぐ完売してしまったので増刷しようかとも思ったのですが、表紙のデザイン紙が廃盤になってしまいそれも叶わず。どうせなら再録本を作りましょう、と思って幾星霜……ようやっとお出しすることになりました。
 こちらも基本的に当時のままになっています。句読点の整理などを多少やったくらいです。「惜しい」という言葉まわりを「値打ちが生かされないことを残念に思う。勿体ない。」と「失いたくない。このままであってほしい。」とできっちり整理しても良かったのかもしれないですが……そこを直すともう「再録」の領域を逸脱しそうな気がして……でもいまだに直すべきだったか迷っています。供恵さんの「きっと十年後、この毎日のことを惜しまない。」は「値打ちが生かされないことを残念に思う。勿体ない。」の意味であると思いますが、そこを反転させるのがこの話のキモだったので……。


3.『Today is yours』(古典部)
 書下ろし。
 ずっと書くと言いながらタイトルが決まらずお出しできなかった話。『runaway girl』と同じ設定のホータローと摩耶花の話。歳を取ると思いのほか友情が降り積もっていたな、みたいなそんな感じの話。
 ずっと書くと言っていたので、これはどうしてもpixiv公開しなければならないと、先行公開しました。里志と摩耶花が別れてたりともういろいろめちゃくちゃやってるので注意です。 https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19243183
 web再録はあまりやらないにも関わらず『runaway girl』をweb再録したのは、『Today is yours』をどうしても先行アップロードしておきたかったからです。
 タイトルは『runaway girl』にあわせてコトリンゴさんの曲からいただいてきました。タイトルそのものよりも、曲の歌詞やイメージが近いのかもしれません。



 世間的には「男女の友情なんてない」と断言する人も多くいるわけですが、私は「ある」という方の人間でして……。極めて個人的な話ですけど、地元に同級生夫婦が住んでいまして。奥さんは中学の同級生なんですが、旦那さんのほうが中・高・大と同級生という(笑)。地元をぶらぶらしているとつかまって「奥さんにトマト買ってこいって言われたんだけど、どんなの買っていいのかわかんねえから八百屋までつきあってくんない」「ええ……赤いの買えばいいじゃん……」みたいな話をしつつ、八百屋につきあってトマトを選んだりする。そういうことって多分、世間的にたくさんあると思うんですよね。
 ホータローと摩耶花も、気心の知れた友だちっていうか……そういう感じになっていったらいいよね、みたいな話です。『鏡には映らない』より前に書き始めたとは思うのですが、少なくとも出来上がった今はちゃんと『鏡には映らない』も反映されています。ホータロー一人称なのでわかりづらいですが……。
 これ、最後まで迷った部分がありました。「少しでもよい方向に進んできたと思えれば、失ったこともいつかは受け入れられるようになる」と断言していいのではないかと。朱字を入れては戻すを繰り返していたのですが、最終的に二十代後半設定なのでまだそこまで悟らなくてもいいか、と今の形になりました。
 

4.『卒業式の光景』(古典部)
 『runaway girl』を発行したイベントの時のペーパーリレー企画からの再録。
 ホータローと千反田さんの話を書いたのだから他の面子でも書きたいよねって書いた話。ホータローと里志が卒業式でぼんやりしている小話。先輩のいない卒業式って手持ち無沙汰なんですよね、実際。


5.『親しき仲にも』(古典部)
 pixivからの再録(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4918836)。
 バレンタインデーにホータローは千反田さんからチョコレートをもらえなかったわけですが、里志はもらえたんですかね。それによってかなり解釈が変わってきちゃうと思うんですが……みたいな話。
 ベタなことをベタなままやっていますね。webに載せるのに割と真面目に書いた珍しい話……webだとつい直せるなって思って気が抜けがちなので……。


6.『握りしめたてのひらに』(古典部)
 pixivからの再録(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5588682#2)。
 原作でモデルとなった高校が甲子園の予選でいいところまで行ってたのをテレビでみて、母校でもなんでもないのに妙にテンションがあがってしまった時の実況中継です(笑)。本当に実況中継で、当時、試合後数時間でアップロードしたような記憶があります。「早い」って言われた記憶も……(笑)。
 母校は本当に弱いというか、私立が強すぎて公立はどうにもならない地区なので、手に汗を握る観戦ってできない、というかしようがないので、勝手ながら楽しく観戦させてもらってうれしかったのもあります。
 今となってはなかなか本当にこの試合運びだったのか確認しにくいので、ほぼ修正なしです。 
 

7.『エピローグをもう一度』(古典部)
 書き下ろしという名の、十年くらい前からパーツだけあったものの形を整えた話。
 正直、こんな機会でもなかったら書き上げられないぞ、と奮闘しました。本当にパーツだけが残っていたので、これ本当にまとまるの?とかなり冷や汗をかきました。ホータローと千反田さんがお付き合いして別れたあと、少し間をあけて里志と摩耶花が駄目になる話。
 『runaway girl』もまあまあ地獄な十年後設定ですが、こちらもまあまあ地獄な五年後くらい設定の大学時代です。違う設定の妄想なんですけど結局地獄を生成している……。『エピローグ』を『もう一度』と。
 でもまあ、記憶が定かならば、これ、もう少し嫌な雰囲気の話だったはずなんです。割と柔らかく着地したので、私が丸くなったのか、別れた友人たちをどう飲み会で誘っていいのか気を遣うのに飽いてきたのがにじんでしまったのか、と少し考えてしまったりします(笑)。

 里志の言い分が「お前……?」って内容なんですけど、『手作りチョコレート事件』をやらかしている里志ならばこういう思考もありかな、なんて思ったりします。いまだ里志がどういう方向に成長したのかが原作で見えないので、やっかいなまま成長したほうを選択しつつ、「若いもんね」みたいな感じです(笑)。

 あ、『runaway girl』も『エピローグをもう一度』もなぜか里志が古典文学をやってることになってますが、特に意味もつながりもないです。私の中で里志は大学で落研に入りそうだな……みたいなイメージが膨らんだだけではないかと……。

 それから、『わたしたちの伝説の一冊』の前に書き出したものなので、摩耶花の状況が割と厳しいです。若干『わたしたちの伝説の一冊』を反映させたので当初よりはかなりマイルドにはなりましたが、どうしてもお話の骨格上大きくマイルドにできなかったので……。とはいえホータローからは見えないのでかなりマイルドなんですけど……(どっち)。


8.『十光年彼方の星彩』(古典部)
 同タイトル同人誌からの再録。
 十年後、高校時代、十年後でサンドイッチした構成の話。ホータローが一人でセンチメンタルな話(いつも通り)。
 このホータローは『runaway girl』とも『エピローグをもう一度』とも違う十年後設定ですね……自分の業の深さと向き合うしかない。
 こちらは千反田さんとお付き合いしなかったホータローのイメージです。また、里志以外とは連絡をとっていない、あるいは里志すら連絡が希薄になっている感じのホータローです。社会人としては働いているでしょうけど、様々な選択をせずズルズルと大人になったイメージ。なのでただただセンチメンタルというか、惜しんでるというか、そういうホータローです。


9.『来し方行く末』(古典部)
 書き下ろし。
 十五年後ホータロー。さらに時間を進ませている! 東京の中小企業営業のホータロー妄想。モブ後輩がいるぞ! 気をつけろ!と、諸々地雷原のようでいて一番落ち着いたトーンの話。
 なんでしょうね……腑に落ちた……違うな……身に着いた……そういう話です。このホータローはライフステージの変化によって自然と古典部の面々と連絡をとらなくなっただけの、普通の真人間というイメージです(?)。友人づきあいって意識していないと維持できないですからね。このホータローは多分会社の飲み会にも行くし、大学の友だちに時々会ったりもしていますし、取引先の人や行きつけの店の人と親しくなってたりすると思います。もう全く違う人間関係の中に生きている人、というイメージです。
 青春が終わったあとの話なので、全体的に赤めにしておきました。手帳とか、ナポリタンとか。


10.『いつも月夜に白い米』(古典部)
 書き下ろし。
 冊子タイトルに合わせたものを書きたくて書いたもの(冊子タイトルは結局諸々変更しましたけど)。二年生の夏休み。この世の春も過ぎれば夏になってさらに飽……秋になるけど冬が来てまた春が来るよねと。
 アニメの『氷菓』がかなり光と影のコントラストが強かったなあと、そんなことを考えながら書いていたような気がします。そのため、この話も文章を脳内で還元していただければそれなりにコントラストが強い感じかと思います。

11.『千の絹 米の可否』(小市民)
 アンソロジーからの再録。
 小佐内さんがミルクレープを食べて、小鳩くんがアメリカンコーヒーを飲む話。タイトルそのままだ。正直、諸説あるので許してほしい。
 

12.『西班牙クレマカタラーナ事件』(小市民)
 アンソロジーからの再録。
 小鳩くんが小佐内さんに「片方はお店で買ったクレマカタラーナ、片方はわたしが作ったクレームブリュレ。さて、どちらがクレームブリュレでしょう」と訊かれる話。タイトルについては本当に許してほしい。今のところ怒られてないのでセーフだと思います(…)。
 ミステリってどうやって書くのかよくわからないんです。ほどほどに好んで読んでいるんですけど、どうやって組み立てるのか全然わからない。状況を考えて、情報の出し方を精査するんだろうなとは思うんですが、いまいちピンとこない。とりあえずやってみるか、とやってみたんですが、ジャンル者でないのにジャンルものを書くのってすごく気恥ずかしいというか……逃げを打ったなって感じがする話になりました。
 いろいろ唸りましたが、アンソロジーからもう少しばかり直してあります。ロジックってよくわからない。


13.『君は冬に雪を掬う』(小市民)
 書き下ろし。
 制作作業中に『冬期』の発行が確定してしまったので、校正・編集作業と並行して書いた、妄想『冬期』。もう少し練りたかったけど実質一ヶ月で書いたので色んな意味で許してほしい。本物が出てくる前に今やるしかないじゃない!
 正直、もう少し切れたかなとか、もう少し明確に対比させられたかなとか思うんですけど、さすがに実質一か月は厳しかった。twitterで「大工事ポイントに気付いてしまう」と言っていたのはこの話です。本当に大工事をしました。あぶなかった。ぎりぎりで成立しなくなるところでした。


 こんな感じの本です。ずいぶん二次創作を楽しませてもらっていますね。ははは……。
 本全体としては、基本的に発表順、書下ろしの場合は構想順になっています。『Today is yours』は例外で、『runaway girl』と並べました。『エピローグをもう一度』はここであっています。メモはこのへんのタイミングなんですね。
 あと、アニメではなく原作準拠とし、「地学講義室」に統一してあります。


 一応手元にある米澤作品の二次創作ネタはこれで全部出し切ったので、すっきりした気分です。
 これで米澤作品の二次創作をやめるというわけではなくて、一度机の上を整理した、みたいな感じです。整理された机の上でまた何か考えることにしましょう。畳む


#作品裏話(二次創作) #米澤穂信 #〈古典部〉シリーズ #〈小市民〉シリーズ
RSS